やまぼうし会(以下本会と呼ぶ)は、「陶磁研究を通じ会員相互の親睦、情報交換、技術の向上を目的として、あわせて会の活動を通して社会貢献活動を実践し、それを通してコミュニティー・ライフを楽しむ」を目的(ミッション)として、陶磁研究会、会員による作品展の開催、国内研修旅行、国際交流活動、機関紙 やまぼうしの刊行、社会貢献活動などを展開しています。
 現在80名の会員を擁し、おもな活動拠点は文京区の施設アカデミー湯島(湯島天神のそば、文京区湯島2-28-14)です。
 本会は設立より21年間の歴史を刻み、陶杜会、陶友会、日本陶磁芸術学会東京藝大支部と改名・組織改編を経て現在に至っていますが、そのミッションは発足以来、今日まで継承されています。本会の生い立ちをご紹介することで、「陶芸を通じた社会貢献」「豊かなコミュニティー・ライフの実現」といった活動の特徴をご理解いただきたいと思います。

【日本陶磁芸術学会東京藝大支部の発足まで】

2000年:東京藝大の工芸科陶芸研究室が、近在住民のための公開講座を始める

東京藝大の工芸科陶芸研究室が、その持てる技術や知識を広く知らしめることを目的に、公開講座「陶芸を楽しむ」を開講したことが本会の源流と言えます。
その後講座の人気が高まり、申し込みをしても抽選漏れ等でなかなか受講できない状態でした。運よく続けて受講できた受講生の間でお互いの陶芸の情報交換や親睦を目的とした交流が始まり、公開講座終了者の会を作ろうという機運が高まってきました。

2002年:陶杜会が発足

有志が中心となり、会の目的を会員相互の親睦と情報交換、東京藝大陶芸研究室への支援及び行事への参加、作品展開催等も視野に入れるなどとして、9月23日に日本陶磁芸術学会友の会「陶杜会」発足式が執り行われました。発足時のメンバーの中で10名ほどが、現在も活動を継続されています。
当時から行われている会員展、見学ツアー、研修旅行、藝大講演会や行事への参加は、現在も継続を図る事業にしています。

2008年~:陶友会へ名称変更と組織改編への模索

ここで、本会の特徴をよりご理解いただくために、本会の母体となった組織についてご紹介します。
まず、日本陶磁芸術学会(以下学会と呼ぶ)は、国際陶芸教育交流学会[1996年発足、英文名称 International Society for Ceramic Art Education and Exchange 略称 : ISCAEE]の日本支部という位置づけです。
本会と縁の深い東京藝術大学の島田文雄先生が、主に設立にあたり奔走されました。省略英文名はJSCAです。
その目的は、陶芸教育に携わり又陶芸作家としての教育者が

  1. 陶芸作家達の横のつながりの場を提供し、交流の場とする
  2. 自分の技法を広く公開して、また他学会員の技法の研究、見聞を広める研究会を行う
  3. 陶芸教育の普及に努め、陶芸を学びたいと志望する人たちに実践教育を行うこと、

とされています。
日本陶磁芸術学会も、その目的のもと、陶芸技法を中心とした学会研究会を開催し、学会員の交流の場、学会員の知識の交換交流の場、地域独特の伝統技法の研究発表の場などを展開しました。
本会と学会の関係もより密接になっていきましたが、一方で、趣旨も性格も異なる両会の整合性をどうとるかが課題となり、議論が続きました。
その結果、日本陶磁芸術学会に属して支部を設置できるよう学会の規約変更をしていただくことで現実的な形で併合が実現し、組織が改変され日本陶磁芸術学会東京藝大支部(省略英文名JACA-TUA、以下藝大支部と呼ぶ)となりました。

2014年:陶友会は発展的解消し、日本陶磁芸術学会東京藝大支部が発足

新組織では、学会の正会員の全員が藝大支部の会員となり、逆に藝大支部の会員は全員が自動的に学会の正会員になりました。このことは本会の大きな特徴であり、活動の可能性が広がりました。
学会は「陶芸教育及び制作活動を通じ、教育の構築、普及とともに陶芸の質、技法の向上をはかることにより世界陶芸文化の創出し、その文化の交流をはかる。」ことをミッションに、学会の名にふさわしくアカデミックな面を強調しつつ社会貢献をめざす組織です。
一方、藝大支部は「東京藝術大学とのコラボによる陶芸教育および作陶活動を通して陶磁芸術交流のコミュニティー・ライフを楽しみます」と愛好者の親睦をめざしています。
それぞれの役割やカラーが発揮されることによって、会員の皆様や社会の期待に応え、活動のいっそうの充実が図られました。
さらに、陶友会が最もこだわってきた「東京藝大陶芸研究室とその学生への物心両面への支援」という思いも、さらに積極的かつ柔軟に展開しました。

【やまぼうし会発足~現在】

2017年;陶芸研究 やまぼうし会発足
このように本会は、東京藝大陶芸研究室から寛大な人的・物質的資源の提供を受け、藝大キャンパスを主な活動場所としてきました。この間に、120有余名の会員を擁する会に成長してきました。
一方で、近年の国立大学を取り巻く教育・研究の環境はますます厳しさを増し、とりわけ藝大キャンパスを活動拠点とすることができないことが明らかになりました。そこで陶芸研究室と協議を重ね、本会は、2017年5月の総会時に「陶磁研究やまぼうし会」と改称し、民間組織として新たな一歩を踏み出し、今日に至ります。一方で、学会は、同時に発展的に改組されて、名称を日本陶磁芸術教育学会(英文省略名JSCAE)となり、新たなミッションを掲げて活動しています。

やまぼうし会は、陶芸研究室との関係は相互扶助の精神を基盤としながらも、社会的要請も踏まえて、ミッションを再構築しました。

「陶磁研究を通じて会員相互の親睦、情報交換、技術の向上を目的として、あわせて会の活動を通して社会貢献活動を実践し、それを通してコミュニティー・ライフを楽しむ」

新たな特徴としては、人生100年時代を迎えて、会員の学びと生きがいの場の創出、社会貢献の実践を、ミッションとして色濃く打ち出したことでしょう。

たとえば、「学会研究会シリーズ」に代わり、「陶磁研究会シリーズ」を立ち上げ、展開しています。また、ご縁に恵まれて、文京区立湯島小学校の特別支援学級の図工「粘土を使った授業」とともにいくつかの図工(陶芸)授業のお手伝いをして、社会貢献の機会を得ました。その活動が認められ、当会は「文京区社会教育関係団体」の資格を付与されました。従前の作品展・チャリティーも、作品展として発展的に開催しています。藝大陶芸研究室との新しい連携体制の構築も進んでいます。

今後も活動のさらなる充実と社会に向けての新たな価値の創出をめざして活動を展開して参ります。
最後になりますが、本会の発展に尽力されてきた、島田文雄先生をはじめ、先生方・役員の皆様に心より感謝申し上げます。